Sigfoxとは
Sigfox(シグフォックス)は、少量のデータを長距離・低消費電力で送ることに特化した無線通信規格です。センサーや計測器から「温度」「開閉」「水位」といった数バイトの値をクラウドへ送り続ける用途を想定して設計されており、大容量のデータをやり取りする一般的な携帯電話回線とは思想が根本的に異なります。
LPWA全体の分類や各方式の位置づけは、以下の記事で詳しく解説しています。
LPWA(LPWAN)とは?特徴や種類ごとの比較、周波数、メリット・デメリットを紹介
Sigfoxの概要と提供体制
Sigfoxはフランス・トゥールーズ近郊で生まれた技術で、当初はSigfox社が単独でネットワークを開発・運営していました。しかし2022年の経営破綻を経て事業は売却され、現在はシンガポールに拠点を置くUnaBiz(ウナビズ)が権利を保有しています。
KCCSの公式サイトによると、Sigfoxは基地局とクラウドサービスをUnaBiz SASが提供し、各国のサービスはUnaBiz SASと契約したオペレーターが構築・運用する体制です。日本国内では、920MHz帯アクティブタグとして制度化されている帯域を使ったサービスを、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)が電気通信事業者として展開しています。
特徴的なのは、1つの国に対して原則1社のオペレーターが専属で運用する「1国1事業者モデル」を採っている点です。利用者側で基地局を用意する必要がなく、契約すればすぐに使い始められる反面、ネットワークの品質やエリア展開、料金体系はオペレーターの方針に依存します。展開国はグローバルで70か国以上(KCCS公式サイト記載、2023年1月時点)とされ、自国のオペレーターと契約すれば他国での利用も可能とされている点が、輸出製品やグローバル物流での強みになっています。ただしこれは契約・課金の面での話です。Sigfoxは地域ごとに使用する周波数や無線設定(Radio Configuration)が異なるため、実際に海外で使うには、端末が渡航先の周波数帯や無線設定、現地の法規制に対応している必要があります。
Sigfoxとは|IoTネットワーク「Sigfox」|KCCS
「0G」と呼ばれる理由と超狭帯域通信の仕組み
Sigfoxは、UnaBizなどによって「0G Network」と呼ばれています。これは4Gや5Gのように標準化された移動通信の世代名ではなく、少量データの通信に特化した設計思想を表すブランド表現です。速度と容量を追い求めてきた携帯通信とは正反対の方向、つまり「これ以上ないほど遅くて軽い通信」を目指した規格だという意味合いが込められています。
技術的な中核にあるのが、UNB(Ultra Narrow Band/超狭帯域)と呼ばれる周波数の使い方です(変調方式そのものは、上りにDBPSK、下りにGFSKが用いられます)。1回の送信に必要な帯域幅は100Hz程度しかなく、極端に狭い帯域にエネルギーを集中させることで、微弱な電力でも遠くまで信号を届けられます。受信側から見ると、狭い帯域だけを見ればよいためノイズの影響を受けにくく、混信に強いという副次的な効果も得られます。
さらに、KCCSが提供する日本国内のSigfoxでは、1つのメッセージを周波数を変えながら3回繰り返し送信します(グローバルの最新仕様では、1回または3回のいずれかの構成が規定されています)。送られたメッセージは特定の1基地局とやり取りするのではなく、受信できた基地局すべてが受け取り、クラウド上で1つのデータとしてまとめられます。デバイスは基地局と接続手続き(ネゴシエーション)を行わず一方的に電波を放つだけなので、通信のたびに消費する電力を最小限に抑えられるわけです。
Sigfoxの通信仕様(上り・下りの制限)
Sigfoxを検討するうえで最初に押さえるべきなのが、通信量の上限です。仕様上の主な制限は次のとおりです。
・上り(デバイスからクラウド):1回あたり最大12バイト、標準的な利用条件で1日最大140メッセージ、通信速度は日本が使用する無線設定(RC3)で100bps
・下り(クラウドからデバイス):1回あたり最大8バイト、1日最大4メッセージ、通信速度600bps
なお、1日のメッセージ数は契約時に選ぶ項目でもあり、140という数字は標準的な上限として扱われる区分です。契約プランによって条件や超過時の扱いが異なる場合があるため、実際の運用条件は契約先に確認してください。通信速度は地域ごとの無線設定によって異なり、地域によっては600bpsが使われます。
12バイトというのは、たとえば「温度」「湿度」「電池残量」「エラーコード」を数値としてビット単位で詰め込んで、ようやく収まる程度の容量です。写真を送れないのはもちろん、キー名や複数項目を含む一般的なJSON形式のテキストをそのまま送るのは容量効率の面で現実的ではありません。実装ではセンサー値をバイナリ形式に符号化し、受信側で復号する設計が一般的です。
下り通信はさらに制約が厳しく、デバイスが下り受信を要求する上りメッセージを送ったあと、一定時間後に短い受信窓が開く方式です。1日4回・8バイトという枠のため、ファームウェアの遠隔更新(OTA)や、押した瞬間に機器を動かすようなリアルタイム制御には適していません。「送りっぱなしで完結する用途かどうか」が、Sigfox採用可否の実質的な分岐点になります。
なお、この12バイト・1日最大140回という仕様は、総務省の情報通信審議会に提出された資料にも記載されており、日本国内での制度上の位置づけとあわせて確認できます。
SIGFOXネットワークのご紹介(情報通信審議会 作業班資料)|総務省
Sigfoxの4つの特徴
Sigfoxの特徴は、大きく4つに整理できます。いずれも「小さなデータを、長く、遠くへ、安く」という設計思想から導かれたものです。
低価格
KCCSの公式サイトでは、IoT用途に適した低価格なプランとして年額100円からという料金水準が案内されています(2026年7月時点の公式サイト記載)。センサー1台あたりの通信費が年間数百円規模に収まるため、数百台から数千台を面的に展開するような監視用途では、携帯回線と比べて総額に大きな差が出ます。
ただし実際の見積もりでは、通信費だけでなくデバイス代、設置工事、可視化アプリケーションの費用が加わります。回線費用が安いことは事実ですが、システム全体のコストが同じ比率で下がるわけではない点には注意が必要です。
低消費電力
KCCSは電池で10年の稼働が可能としています。送信のたびに基地局と接続手続きを行わず、送信時間そのものも短いため、待機時の消費電流を絞り込めば長期間の電池駆動が現実的になります。
実際の電池寿命は送信頻度に大きく左右されます。1日数回の送信で済む用途なら数年単位の運用が見込める一方、上限に近い1日140回を送り続ければ消費量は跳ね上がります。「電池交換に人が行けない場所」ほどSigfoxの価値は高くなるため、設計段階で送信頻度と電池容量の見積もりを詰めておくことが重要です。
長距離伝送
見通しの良い環境であれば、最大10km程度の距離での通信が可能とされています。1つの基地局が広い範囲をカバーできるため、農地や河川、山間部の設備監視のように対象が広範囲に散らばる用途と相性がよい特性です。
一方で、実際の到達距離は建物の構造や地形、周囲の電波環境によって大きく変動します。とくに地下やトンネル、金属に囲まれた設備の内部では電波が届きにくく、その場合は小型基地局を建物内に設置するといった追加の対策が必要になります。導入前のエリア確認と現地での電波試験は欠かせません。
通信の安定性と耐干渉性
超狭帯域通信は、受信に必要な帯域幅が狭いぶん取り込むノイズ成分を抑えられます。これに周波数を変えた3回の繰り返し送信と、複数基地局での同時受信が組み合わさることで、1回の送信が失われても他の経路で拾える冗長性が確保されています。
もっとも、これは「必ず届く」ことを保証する仕組みではありません。通常の上りメッセージでは、携帯電話回線のような接続型の到達確認を行わない設計です。下り通信を要求した場合には、その送信結果を確認する仕組みが用意されていますが、上りデータが確実に届いたかどうかを端末側で毎回確認する使い方には向いていません。欠測を許容できる監視用途か、欠測が事故につながる用途かを見極めておきましょう。
SigfoxとほかのLPWA・セルラーIoTの違い
Sigfoxを検討する場面では、必ずLoRaWANやLTE-M、NB-IoTといった選択肢が比較対象に挙がります。それぞれ設計思想が異なるため、優劣ではなく用途との相性で選ぶのが基本です。
LPWA主要4方式の比較
| 項目 | Sigfox | LoRaWAN | LTE-M | NB-IoT |
| 周波数 | サブギガ帯(国内920MHz帯) | サブギガ帯(国内920MHz帯) | 携帯電話用周波数 | 携帯電話用周波数 |
| 免許 | 不要(オペレーターが運用) | 不要(自営構築が可能) | 携帯事業者の免許 | 携帯事業者の免許 |
| ネットワーク構築 | 事業者提供のみ | 自営/事業者提供の両方 | 事業者提供 | 事業者提供 |
| 1回のペイロード量 | 上り最大12バイト | 数十〜数百バイト | 事業者・端末仕様による | 事業者・端末仕様による |
| 通信速度の目安 | 上り100bps(国内RC3) | 0.3〜50kbps | 最大1Mbps級 | 最大数十〜250kbps級 |
| 双方向通信 | 下りは1日4回・8バイト | 対応(クラス次第) | 対応 | 対応(制約あり) |
| 得意な用途 | 少量データの定点監視 | 自営網での構内監視 | 移動体・音声・低遅延 | 固定設置の検針など |
※各方式の値は代表的な条件での目安です。とくにLTE-MとNB-IoTは、1回に送れるデータ量が仕様で固定されているわけではなく、通信事業者のプランや端末仕様、上位のプロトコルによって変わります。
LoRaWANとの違い
SigfoxとLoRaWANは、どちらもサブギガ帯を使う非セルラー系のLPWAで、日本では920MHz帯を利用する点も共通しています。最大の違いは、ネットワークを誰が持つかという点です。
Sigfoxは各国のオペレーターが構築した公衆網を利用する形式で、利用者は回線を契約するだけで使い始められます。対してLoRaWANは、利用者が自分でゲートウェイを設置し、自営のネットワークを構築できます。工場やプラント、大規模施設のように敷地内で完結する監視であれば、自営網を持てるLoRaWANのほうが通信量の制限を受けにくく、設計の自由度も高くなります。
逆に、対象が全国に点在していたり、自社で無線設備を運用する体制がなかったりする場合は、公衆網として提供されるSigfoxのほうが導入負荷は小さくなります。LoRaWANの詳細は以下の記事で解説しています。
LoRaWAN(ローラワン)とは? IoT向け無線通信規格の特徴、LoRaとの違い、技術、活用事例
LTE-M・NB-IoTとの違い
LTE-MとNB-IoTは、携帯電話網を使うセルラー系のLPWAです。SIMカードを使い、携帯電話事業者のエリアをそのまま利用できるため、全国規模のカバー率と、通信事業者による品質管理が期待できます。
通信量の制約もSigfoxほど厳しくなく、双方向のやり取りやファームウェアの遠隔更新にも対応しやすい点が実務上の大きな差です。とくにLTE-Mは移動しながらの通信(ハンドオーバー)に対応するため、車両やパレットの追跡といった移動体の用途に向いています。
一方で、回線あたりの月額はSigfoxより高くなる傾向があり、消費電力の面でも一般に不利です。「電池交換ができない環境で、10年近く放置したい」という要求が強いほどSigfox側の利点が効き、「双方向にやり取りしたい」「エリアを全国で担保したい」という要求が強いほどセルラー側が有利になります。
なお、3Gの終了に伴い旧来のM2M回線を入れ替えた現場では、そのままLTE-Mやカテゴリ1のSIMへ移行した例も多く見られます。移行時の考え方は以下の記事が参考になります。
3G終了で使えなくなるものとは?知らないと危険な影響と今すぐやるべき対策
Sigfoxの料金
日本国内でSigfox回線を使う場合、KCCSから直接契約する方法と、ソラコムなどのパートナー経由で契約する方法があります。いずれも年間契約が基本で、携帯回線のような月額課金とは考え方が異なります。
KCCSから直接契約する場合
KCCS公式サイトでは、IoT用途に適した低価格なプランとして年額100円からという水準が案内されています(2026年7月時点)。実際の適用料金は契約回線数や利用形態によって変わるほか、2025年10月には「Sigfox Buy」の提供価格改定も告知されているため、見積もり時点の最新条件を必ず確認してください。
ソラコム経由で契約する場合
ソラコムが提供する「SORACOM Air for Sigfox」は、同社のIoTプラットフォームと組み合わせてSigfox回線を利用できるサービスです。2026年3月1日に料金改定が行われており、改定後の公開料金は、デバイス登録料金が1デバイスあたり1,980円、通信料金が1年あたり1,980円となっています(2026年7月時点の公開情報)。
SORACOM Air for Sigfox の利用料金|ソラコム
Sigfoxの導入手順
Sigfoxをビジネスに活用するには、大きく4つのステップを踏みます。SIMカードの差し替えが不要で、ネットワーク側の準備も不要なため、検証開始までの手数は比較的少なく済みます。
デバイスを入手する
Sigfox対応デバイスは、国内外の多数のパートナー企業から提供されています。温湿度センサー、開閉センサー、水位計、GPSトラッカーなど、用途別に完成品が用意されているほか、自社製品に組み込むための開発ボードやモジュールも入手できます。
重要なのは、使用する国・地域の周波数帯に対応した製品を選ぶことです。日本国内では920MHz帯を使うため、欧州向け(868MHz帯)の製品をそのまま持ち込んでも利用できません。国内向けの技術基準適合証明を取得しているかどうかも、必ず確認しておきましょう。
回線を入手しデバイスを登録する
デバイスを用意したら、回線を契約し、デバイスをSigfoxのクラウド(Sigfox Backend Cloud)に登録します。登録にはデバイス固有のIDとPAC(Porting Authorization Code)と呼ばれる認証コードを使い、デバイスと回線を紐づけたうえでネットワークを有効化します。
メッセージを送信して疎通を確認する
紐づけが完了したら、デバイスから実際にメッセージを送信し、クラウド上で正しく受信できているかを確認します。この段階で電波強度(RSSI)や受信した基地局の数を確認しておくと、設置場所の電波環境を客観的に評価できます。
屋外の設置予定地点だけでなく、金属筐体の内部や地下ピットなど、条件の厳しい場所でも必ず試験を行ってください。Sigfoxは到達確認が返らない設計のため、本番運用に入ってから「特定の1台だけデータが上がってこない」といった問題に気づくケースがあります。
データを連携・可視化する
受信したメッセージは、Sigfoxのクラウドからコールバック機能を使って自社のWebアプリケーションサーバーへ転送し、蓄積・可視化します。送られてくるのはバイナリ形式の12バイトなので、あらかじめ決めた仕様に従ってサーバー側で数値に復号する処理が必要です。
Sigfoxを始めよう|IoTネットワーク「Sigfox」|KCCS
Sigfoxの活用事例
実際にSigfoxが採用されている国内の事例を、KCCSが公開している導入事例から3つ紹介します。いずれも「少量のデータを、電源の確保が難しい場所から、広範囲にわたって集める」という共通点があります。
高齢者の見守り|大阪府住宅供給公社
大阪府住宅供給公社の団地で、Rootsが提供する高齢者見守りサービス「RefPaC 生活確認サービス」にSigfox回線が使われています。冷蔵庫や部屋のドアなど生活動線上に小型デバイスを設置し、開閉の有無を検知して親族や保護者へメールで通知する仕組みです。
採用の決め手となったのは、住戸ごとにインターネット回線を敷設する必要がないことと、複数の公社団地にすでにアンテナが設置済みで、すぐにサービスを利用できる状態にあったことでした。居住者側の工事負担を抑えられる点は、住宅への導入で特に効いてくる利点です。
CO2濃度の見える化|まるは食堂
飲食店のまるは食堂では、ハーモニィが提供する温湿度・CO2測定サービス「MORITO CO2ウォッチャー」にSigfoxが利用されています。店内に設置したセンサーがCO2濃度や湿度を計測し、Sigfox経由でパソコンやスマートフォンにデータを表示する構成です。
採用理由として挙げられているのは消費電力の低さです。店舗の客席周辺は電源を取りにくく、配線が景観を損ねる場所でもあるため、電池駆動で長期間動作する点が導入のハードルを下げています。数分おきに数バイトを送るだけで足りる用途は、Sigfoxの適性がそのまま活きる典型例といえます。
水位モニタリング|岡崎市土木建設部河川課
愛知県岡崎市では、総合雨水対策計画における内水氾濫対策として、用排水路の水位をリアルタイムで監視する「中小河川水位モニタリングシステム」にSigfoxが活用されています。積水樹脂が関わり、面的な水位監視によって効率的な河川・下水道整備につなげる取り組みです。
導入理由として挙げられているのはスモールスタートが可能な点でした。広域を一度に整備するのではなく、優先度の高い地点から順次センサーを増やしていける柔軟さは、予算年度の制約が大きい自治体の事業と相性がよい特性です。
Sigfoxをめぐる最新動向
Sigfoxは技術そのものよりも、運営会社の経営状況が注目を集めてきた規格でもあります。導入判断に直結する情報なので、これまでの経緯を時系列で整理します。
2022年 経営難とUnaBizによる買収
2022年1月、フランスのSigfox社が経営難により裁判所の管財人の管理下にあることが報じられました。翌2月には正式に破産保護を申請し、トゥールーズの商事裁判所で管財・再生手続が開始されます。当時の負債は1億5,300万ユーロ規模とされ、複数の企業が買収に名乗りを上げる展開となりました。
そして2022年4月、シンガポールを拠点とするUnaBizが新たな所有者として承認されます。UnaBizはSigfox SAとSigfox France SASの両社を取得し、事業の継続性を最優先に掲げてネットワークとバックエンドシステムの維持にあたりました。日本のKCCSも当時、日本国内でのサービスは継続する方針を示しています。
2023〜2024年 オープンソース化と資金調達
買収後のUnaBizは、旧来の閉じた運営方針からの転換を進めました。2023年4月にはSigfoxのデバイス向けライブラリを開発者向けに公開し、デバイスへの実装を簡単かつ低コストにする方針を打ち出しています。競合とされてきたLoRaWAN陣営との協業にも踏み込み、技術を囲い込まない路線へ舵を切りました。
2024年8月には、日本のKDDIと京セラコミュニケーションシステムから2,500万ドルの新規資金を調達したことを発表しています。UnaBizは買収からの立て直しが完了したとし、接続数は約4百万件(およそ40%)増加したと説明しました。
Unabiz makes break with past to release Sigfox code into the wild|RCR Wireless News
2025〜2026年 フランス法人の再建手続き
一方で、2025年9月にはUnaBizのフランス法人であるUnaBiz SASとUnaBiz Network SAS(旧Sigfox France SAS)が、トゥールーズ商事裁判所に再建手続(redressement judiciaire)を申請し、認可されました。同社の説明によれば、フランス国内の負債は約500万ユーロで、その多くは自国でネットワークを立ち上げた際の鉄塔事業者への長期賃借料に由来するものです。
グローバルの接続数は900万件から1,500万件へ、売上は1,200万ユーロから3,000万ユーロへ伸びており、負債規模も2022年当時とは大きく異なります。UnaBiz側は、フランス事業を売却するのではなく再編して継続する意向を示しており、スペインやポルトガルをはじめとする各国のSigfox事業には影響がないとしています。
その後、フランスの企業情報によると、2026年3月19日付でトゥールーズ商事裁判所が観察期間を6か月間延長する判決を出しています。本記事執筆時点(2026年7月)では、その後の最終的な事業継続計画の認可を示す一次資料までは確認できていません。日本での利用に直ちに影響が及ぶ状況ではありませんが、長期運用を前提に採用する場合は、UnaBizおよびKCCSの最新発表を継続的に確認することをおすすめします。
UNABIZ 企業情報(法的手続きの記録)|societe.com
日本国内のサービス提供状況
日本国内では、KCCSがオペレーターとしてサービスを継続しています。同社のニュースページでは、2026年4月にSigfoxサービスの障害発生に関する報告が、2026年7月にはKCCSのSigfoxサイトを装った偽サイトへの注意喚起が掲載されています。契約や見積もりの際は、必ず正規のドメインからアクセスすることを社内で徹底してください。
グローバルの事業環境に不透明さは残るものの、国内では回線契約、デバイス調達、導入事例の蓄積がいずれも継続しており、2026年7月時点で通常どおり利用できる状態にあります。
2026年時点でSigfoxを選ぶべきか
ここまでの内容を踏まえ、いま新規にSigfoxを採用してよいのかという観点で整理します。結論としては、用途がSigfoxの制約にきれいに収まるのであれば依然として有力な選択肢であり、そうでなければ無理に合わせる必要はない、というのが実務的な判断です。
Sigfoxが向いている用途
・数バイトの値を1日数回から数十回送るだけで完結する定点監視
・商用電源が取れず、電池交換の頻度をできる限り下げたい設置環境
・数百台以上を面的に展開し、1台あたりの通信費を抑えたいケース
・海外にも同じ製品を出荷し、同一の仕組みで運用したいケース
慎重に検討したい用途
・画像や音声、詳細なログなど、まとまった容量のデータを送りたい用途
・遠隔からの制御指示や、ファームウェアの遠隔更新を前提とする用途
・異常検知から通知までの遅延を秒単位で保証する必要がある用途
・地下や金属筐体内など、電波の到達が見込みにくい設置環境
これらに該当する場合は、LTE-MやNB-IoT、あるいは通常のLTE回線を用いたほうが、結果として設計も運用もシンプルになります。回線費用の差だけで判断すると、後から追加開発や現場対応の工数がかさむ点には注意が必要です。
導入前に確認しておきたいポイント
・設置予定地点がサービスエリアに含まれているか、現地で電波試験を実施したか
・想定する送信頻度で、必要な電池寿命を満たせるか
・データ欠測が発生した場合に業務上どこまで許容できるか
・長期運用を前提とする場合、事業継続に関する情報をどの頻度で確認するか
・将来的にセルラー回線へ移行する可能性を見込み、可視化側の仕組みを通信方式に依存しない構成にできるか
セルラー通信という選択肢
Sigfoxの制約に収まりきらない場合や、全国規模のエリアと双方向通信を確保したい場合には、SIMを使ったセルラー通信が現実的な選択肢になります。とくに監視カメラのように上り方向のデータが多い用途では、上り通信に最適化されたプランを選ぶことでコストを抑えられます。
株式会社CoeNova(旧DXHUB株式会社)が提供するIoTBiz SIMは、4キャリア(ドコモ・ソフトバンク・KDDI・楽天)に対応し、1回線から契約できるIoT/M2M向けのSIMサービスです。主な特徴は次のとおりです。
・4キャリア対応で、設置場所の電波状況に合わせて回線を選べる
・1回線から契約可能、最短翌日発送
・初回取引から売掛け対応(Paid決済)
・テストSIMの貸し出しに対応(最大1週間)
代表的な料金は、ドコモ回線の通常プランが1GB 450円/月から50GB 6,500円/月(税別)、監視カメラなど上り中心の用途に適した上り特化大容量プランが上り100GB 2,980円/月(税別)からとなっています。
なお、固定IPオプションの取り扱いもありますが、在庫が変動するため提供可否はお問い合わせください。
プランの詳細や見積もりは、以下のページから確認できます。
IoT/M2M向けSIM「IoTBiz SIM」の詳細・お問い合わせ
複数のIoT向けSIMサービスを横断して比較したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【IoT/M2M向けSIM】用途・企業規模別に徹底比較13選!
まとめ
Sigfoxは、上り12バイト・1日140回という極端な割り切りと引き換えに、低価格と長期の電池駆動、そして長距離伝送を実現したLPWA規格です。日本国内ではKCCSがオペレーターとしてサービスを提供しており、見守り、CO2濃度の可視化、水位モニタリングなど、少量データの定点監視で着実な実績を積み重ねてきました。
運営元はSigfox社からUnaBizへ移り、2025年以降はフランス法人の再建手続きが続いています。ただし国内サービスは継続しており、用途が仕様の制約に収まるのであれば、2026年時点でも有効な選択肢です。
一方で、双方向のやり取りや大きめのデータ、リアルタイム性が求められる場面では、LTE-MやNB-IoTを含むセルラー通信のほうが適しています。まずは「何バイトを、1日何回、どこから送るのか」を具体的に書き出すところから始めてください。その一枚のメモがあれば、Sigfoxを選ぶべきかどうかの判断は、驚くほど早く定まります。
・M2Mの基礎的な考え方を整理したい方はこちらもご覧ください。