Gemini「Gem」とは
Gem(ジェム)とは、Googleの生成AI「Gemini」を特定の用途に合わせてカスタマイズできる機能です。あらかじめ役割や回答のルールを「カスタム指示」として登録しておくことで、毎回長いプロンプト(AIへの指示文)を入力しなくても、目的に合った回答を安定して引き出せるようになります。
例えば「議事録を整形するGem」「英文メールを作成するGem」のように、業務ごとに専用のアシスタントを用意しておくイメージです。プログラミングの知識は不要で、画面上の設定だけで作成できます。
Geminiそのものの特徴や料金体系については、以下の記事で詳しく解説しています。
Geminiとは?Googleの生成AIの特徴・料金・ビジネス活用法を徹底解説
Gemでできること
Gemに登録したカスタム指示は保存・再利用できるため、次のような使い方が可能です。
・毎回入力していた定型プロンプトを省略し、素材や要点を貼り付けるだけで意図した回答を得る
・文体やフォーマット、出力形式を固定し、誰が使っても同じ品質のアウトプットを得る
・参考資料(知識ファイル)をアップロードし、自社のマニュアルやルールに沿った回答をさせる
通常のチャットとの最大の違いは、指示が「その場限り」か「継続的」かという点です。通常のプロンプトは会話ごとに入力し直す必要がありますが、Gemは一度設定した役割やルールを保存し、何度でも呼び出せます。繰り返し発生する業務ほど、Gem化による時間削減の効果は大きくなります。
無料版・有料プランでの利用可否と上限
Gemは提供開始当初、有料プランの利用者のみが作成できる機能でしたが、その後無料ユーザーにも段階的に開放され、2026年7月時点では無料のGoogleアカウントでもカスタムGemの作成を含む基本機能を利用できるとされています。ただし、1日あたりの利用回数や作成可能数には利用状況・プランに応じた上限があり、上限値は変更されることがあるため、最新の条件はGoogle公式ヘルプで確認してください。
なお、Geminiの有料プランは名称・体系の変更が続いています。従来の「Gemini Advanced」は「Google AI Pro」(月額2,900円)に改称され、2026年1月にはより手頃な「Google AI Plus」(月額1,200円)が追加されたと報告されています。業務で毎日ヘビーに使う場合は、高性能モデルの利用枠が広がる有料プランの検討が現実的です(金額はいずれも2026年7月時点の情報です)。
Gemの作り方【5ステップ】
ここからは、Google公式ヘルプの手順に沿って、カスタムGemを作成する流れを5つのステップで解説します。パソコンのブラウザからGeminiウェブアプリ(gemini.google.com)を利用する場合を想定しています。
ステップ1 Gemini画面から「Gemを作成」を開く
まず、ブラウザでgemini.google.comを開き、Googleアカウントでログインします。画面左側のメニューにある「Gemを表示」を選択し、続けて「Gemを作成」をクリックすると、新しいGemの作成画面が開きます。
作成画面には、Gemの名前を入力する欄と、カスタム指示を入力する欄が表示されます。なお、同じ画面からGoogleがあらかじめ用意した「プリメイドGem」も利用できます。学習支援やブレインストーミングなど代表的な用途のGemが揃っているため、自作する前の参考例として一度試してみるのもおすすめです。
また、Google公式ヘルプでは、カスタムGemを作成できるのはGeminiウェブアプリと案内されています。スマートフォンで作業したい場合も、ブラウザからウェブ版のGeminiにアクセスして作成するとよいでしょう。
ステップ2 名前とカスタム指示を設定する
次に、Gemの名前と、Gemが従うべきカスタム指示を入力します。名前は「議事録整形Gem」「英文メール作成Gem」のように、用途がひと目でわかるものにしておくと、後から探しやすくなります。
カスタム指示には、Gemに担わせたい役割、実行してほしいタスク、前提となる背景情報、出力してほしい形式などを記述します。詳しい書き方のコツは後述しますが、最初は1〜2文の簡単な指示から始めて、動作を確認しながら育てていく進め方でも問題ありません。
ステップ3 Geminiに指示文をブラッシュアップさせる
Gemの作成画面には、入力した指示文をGemini自身に書き換えさせる機能が用意されています。指示ボックスに目的を1〜2文で入力し、「Geminiを使用」ボタンをクリックすると、指示文がより詳細で構造化された内容に書き換えられます。
プロンプト作成に慣れていない場合でも、この機能を使えば要件の抜け漏れを補った指示文を短時間で用意できます。書き換えられた指示文はそのまま確定する必要はなく手動で編集できるため、自社の用語や業務ルールに合わせて微調整するとよいでしょう。
ステップ4 知識ファイルをアップロードする
Gemには、回答の参考となる「知識ファイル」をアップロードできます。作成画面の「知識」欄にあるファイル追加アイコンをクリックし、端末内のファイルをアップロードするか、Googleドライブ上のファイルを選択します。
例えば、社内マニュアルや用語集、過去の報告書のサンプルなどを登録しておけば、Gemはそれらの内容を踏まえて回答するようになります。なお、Googleドライブからファイルを追加するには、Geminiアプリの設定で「アクティビティの保存」をオンにし、Google WorkspaceをGeminiアプリに接続しておく必要があります。対応するファイル形式や容量には制限があるため、うまく追加できない場合は公式ヘルプの条件を確認してください。
ステップ5 プレビューで動作確認して保存する
設定が済んだら、作成画面の右側にあるプレビュー欄にテスト用のプロンプトを入力し、Gemが意図どおりに回答するかを確認します。ここで注意したいのは、プレビューで動作を確認しただけではGemは保存されないという点です。挙動に問題がなければ、必ず「保存」をクリックして作成を完了させてください。
保存したGemはサイドメニューに表示され、いつでも呼び出して利用できます。作成後もカスタム指示や知識ファイルは編集できるため、実際に使いながら改善を重ねていきましょう。
精度を高めるカスタム指示の書き方
Gemの回答品質は、カスタム指示の質に大きく左右されます。ここでは、Google公式ヘルプで推奨されている指示作成の考え方と、つまずいたときの改善ポイントを紹介します。
ペルソナ・タスク・コンテキスト・形式の4要素
Google公式ヘルプでは、カスタム指示を作成する際の主な観点として「ペルソナ」「タスク」「コンテキスト」「形式」の4つを挙げています。
・ペルソナ:Gemが担う役割と回答の仕方を伝える(例:あなたはBtoBメディアの編集者です)
・タスク:してほしいこと・作成してほしいものを伝える(例:入力された文章を校正し、修正理由を説明してください)
・コンテキスト:前提となる背景情報をできるだけ多く伝える(例:読者は製造業の現場担当者です)
・形式:出力の構成を具体的に指定する(例:修正箇所を箇条書きで列挙し、最後に修正後の全文を提示してください)
4つすべてを必ず含める必要はありませんが、いくつかの観点に言及しておくだけでも回答の一貫性が高まるとされています。特に業務利用では、出力形式を固定しておくと後工程での使い回しがしやすくなります。
うまく動かないときの改善ポイント
作成したGemが期待どおりに動かない場合は、次の観点で指示を見直してみてください。
・指示が抽象的すぎないか:「わかりやすくまとめて」ではなく「決定事項とToDoを分けて箇条書きにして」のように具体化する
・条件が多すぎないか:矛盾する指示や過剰な条件は削り、優先順位を明記する
・入力例・出力例があるか:望ましい入出力のサンプルを指示文に含めると、挙動が安定しやすくなります
・知識ファイルが適切か:古い資料や関係の薄い資料が混ざっていると、回答の精度が下がる場合があります
一度で完璧を目指すのではなく、プレビューで試しては指示を直すというサイクルを短く回すことが、精度向上の近道です。改善の履歴をメモしておくと、別のGemを作る際のノウハウとしても活用できます。
ビジネスで役立つGemの活用例
ここでは、企業の現場業務を想定した代表的なGemの活用例を紹介します。いずれも定型性が高く、Gem化の効果が出やすい業務です。
定型文書・メール作成の効率化
問い合わせへの返信メール、社内報告、プレスリリースの下書きなど、型が決まっている文書作成はGemの得意分野です。自社のトーンや書式、宛先ごとの敬語レベルをカスタム指示に登録しておけば、要点を箇条書きで入力するだけで、体裁の整った文面を短時間で生成できます。
担当者ごとの文面のばらつきを抑えられるため、作業時間の短縮だけでなく、対外的なコミュニケーション品質の標準化にもつながります。さらに、よくある質問と回答例をまとめた資料を知識ファイルとして登録した「問い合わせ一次対応Gem」を用意すれば、回答文案の作成を効率化することも可能です。
議事録・報告書の整形と標準化
会議中に取った雑多なメモを渡すと「議題」「決定事項」「アクションアイテム」などの決まった構成に整形するGemを作っておくと、議事録作成の負担を大きく減らせます。フォーマットをGem側で固定しているため、誰が実行しても同じ構成のドキュメントが得られ、記録の品質が担当者に依存しなくなります。
日報・週報や設備の点検報告など、現場から定期的に上がってくる報告書の整形にも同じ考え方が応用できます。報告フォーマットが統一されれば、後からの検索や集計もしやすくなり、蓄積したデータを分析や改善活動に活かしやすくなるという副次的な効果も見込めます。
作成したGemをチームで共有する
2025年秋以降、作成したカスタムGemを他のユーザーと共有できるようになりました。Googleドキュメントの共有と同様の操作感で、指定したメンバーやリンクを知っている相手に対して、閲覧者(Gemを使える)や編集者(Gemの中身を変更できる)といった権限を設定して共有できます。
優れたプロンプトを個人のノウハウで終わらせず、チームの共有資産にできる点が大きなメリットです。ベテランが作った業務Gemを新しいメンバーに共有すれば、教育の手間を抑えながらアウトプットの品質を底上げする効果も期待できます。
Gemを業務利用する際の注意点
便利なGemですが、業務で使う際には押さえておきたい注意点があります。
機密情報・社内データの取り扱い
Gemのカスタム指示や知識ファイルに、顧客情報や未公開の経営情報といった機密性の高いデータを安易に登録することは避けるべきです。特にGemを共有する場合、知識ファイルの内容が共有相手からの質問を通じて参照される可能性があるため、共有範囲と登録データの機密レベルが釣り合っているかを必ず確認しましょう。
また、生成AI全般に共通する注意点として、もっともらしい誤情報(ハルシネーション)が出力される可能性は残ります。Gemの回答を対外文書や意思決定に使う際は、人による最終確認を前提に運用してください。組織として利用する場合は、入力してよい情報の範囲を定めた社内ガイドラインの整備をおすすめします。なお、法人向けのGoogle Workspace環境では、個人向けとはデータの取り扱い条件が異なる場合があるため、契約プランの利用規約やデータ保護の条件もあわせて確認しておくと安心です。
ChatGPTのGPTsとの違い
Gemとよく比較されるのが、ChatGPTのカスタムAI機能「GPTs」です。どちらも「指示や知識を登録した専用AIを作る」という点は共通していますが、GPTsの作成には有料プランの契約が必要とされる一方、Gemは無料アカウントでも作成できる点が異なります(2026年7月時点)。
また、GemはGoogleドライブやGmailなどGoogleサービスとの連携を前提に設計されており、Google Workspaceを利用している企業では既存のドキュメントやデータを活かしやすいのが強みです。一方、GPTsは外部サービスとのAPI連携など拡張の柔軟性に強みがあるとされています。普段の業務基盤がGoogle中心かどうかが、使い分けのひとつの目安になるでしょう。
ChatGPT側で会話や資料を業務単位でまとめて扱う機能については、以下の記事も参考にしてください。
ChatGPTのプロジェクト機能とは?特徴や利用方法、押さえるべきポイントを解説
AI活用の土台となる通信環境の整備も忘れずに
Gemをはじめとする生成AIはクラウド上で動作するため、活用の前提として安定したインターネット接続が欠かせません。オフィスだけでなく、工場・倉庫・建設現場・店舗など、固定回線の敷設が難しい現場でAIを活用したいケースでは、モバイル回線の整備が課題になります。
また、議事録整形Gemに渡す音声メモや、報告書作成の元になる現場写真・センサーデータなど、AIに入力するデータの多くは現場で発生します。IoT機器やカメラで現場のデータを収集し、クラウドに集約する通信環境を整えておくことが、AI活用の効果を最大化する土台になります。特に監視カメラの映像やセンサーの計測値をクラウドへ送る用途では、下りよりも上り方向の通信量が多くなる傾向があるため、用途に応じてデータ容量や上り通信の比率に合った回線・プランを選定しましょう。
まとめ
Gemは、Geminiに役割とルールを覚えさせ、繰り返し使える専用アシスタントを作れる機能です。作成手順は「Gemを作成」画面で名前とカスタム指示を設定し、必要に応じて知識ファイルを追加して、プレビューで確認後に保存するだけとシンプルで、プログラミングの知識は必要ありません。
カスタム指示はペルソナ・タスク・コンテキスト・形式の4要素を意識して書き、プレビューで試しながら改善していくのが精度向上のコツです。定型文書や議事録の作成をGem化してチームに共有すれば、業務品質の標準化と効率化を同時に進められます。機密情報の取り扱いに注意しつつ、まずは身近な定型業務からGem作りを試してみてはいかがでしょうか。