VPNが繋がらないときにまず確認したい3つのポイント
VPNが急に繋がらなくなったとき、やみくもに設定をいじる前に、まず確認すべき基本的なポイントが3つあります。トラブルの多くはこの段階で原因の見当がつくため、最初の切り分けとして必ず実施しましょう。
インターネット接続そのものが生きているか
インターネットVPNの場合、通常のインターネット回線の上に暗号化された通信路(トンネル)を構築します。そのため、土台となるインターネット接続自体が不安定な場合、VPN接続も失敗したり切断されたりすることがあります。まずはブラウザを開き、一般的なWebサイトが表示されるかを確認してください。Webサイトも開けない場合は、VPNではなく回線側の問題です。ルーターやONU(光回線の終端装置)の再起動、LANケーブルの抜き差し、Wi-Fi利用時は有線接続への切り替えなどを試しましょう。無線接続は電波強度や干渉の影響を受けやすいため、VPNを安定して使いたい業務環境では有線接続が推奨されます。
また、Webサイトは開けるのに通信が不安定な場合も注意が必要です。VPNは暗号化と復号の処理が加わるぶん、通常の通信よりも安定した回線品質を必要とします。回線速度が極端に遅い時間帯や、同じ回線の利用者が多い環境では、VPN接続が確立できなかったり、途中で切断されたりすることがあります。
認証情報(ID・パスワード・事前共有キー)に誤りがないか
インターネット接続に問題がなければ、次に疑うべきは認証情報です。VPN接続にはユーザー名・パスワードに加え、方式によっては事前共有キー(接続する双方であらかじめ取り決めておく合言葉のような文字列)が必要です。これらのいずれかが1文字でも間違っていると接続は確立しません。
特に多いのが、次のようなケースです。
- パスワード変更後に、VPNクライアント側の保存情報を更新していない
- 事前共有キーの入力時に、大文字・小文字や記号を取り違えている
- サーバーアドレス(IPアドレスやホスト名)の入力ミス
- 社内のアカウントロックポリシーにより、一定回数の失敗でアカウントが凍結されている
心当たりがある場合は、情報システム部門に正しい認証情報を再確認し、入力し直してみてください。
VPNサーバー側に障害が起きていないか
自分の端末や設定に問題がなくても、接続先のVPNサーバー側に障害が起きていれば繋がりません。サーバーのハードウェア障害やメンテナンスのほか、テレワークの開始時刻などアクセスが集中する時間帯に、同時接続数の上限や帯域不足で新規接続を受け付けられなくなるケースもあります。
切り分けのポイントは「自分だけが繋がらないのか、他の人も繋がらないのか」です。同僚も同様に接続できない場合は、サーバー側または社内ネットワーク側の問題である可能性が高いため、個人での対処はいったん止めて管理者へ連絡しましょう。
端末側に原因がある場合の対処法
基本確認で問題が見つからない場合、接続元の端末側に原因があるケースを順に切り分けていきます。
ファイアウォール・ウイルス対策ソフトの影響を切り分ける
端末にインストールされたファイアウォールやウイルス対策ソフトが、VPN通信を不正な通信と誤認してブロックしてしまうことがあります。とくにセキュリティソフトの更新やOSアップデートの直後に急に繋がらなくなった場合は、この可能性が高いといえます。
切り分けの手順としては、セキュリティソフトやファイアウォールを一時的に無効化し、VPN接続を試します。接続できればブロックが原因と確定できるため、セキュリティソフトの例外リスト(許可リスト)にVPNソフトや使用ポートを登録したうえで、必ず保護を元に戻してください。無効化したまま業務を続けるのはセキュリティ上危険です。
VPNソフトの再起動・再インストール
VPNクライアントソフト自体の一時的な不具合も、よくある原因のひとつです。ソフトを完全に終了してから再起動する、それでも改善しなければ端末自体を再起動する、という基本的な操作で解消することが少なくありません。
それでも繋がらない場合は、VPNソフトの再インストールを検討します。また、過去に別のVPNソフトを試用したことがある端末では、古いソフトや仮想ネットワークアダプタが残っていて、新しいVPN接続を妨げることがあります。使っていないVPNソフトはアンインストールしておきましょう。
OSやVPNソフトのバージョンを確認する
OSやVPNソフトのバージョンが古いままだと、接続先サーバーとの互換性問題や既知の不具合により接続できないことがあります。逆に、OSの更新プログラム適用直後にVPNが繋がらなくなる事例も過去に報告されています。
- VPNソフトが最新バージョンになっているかを確認する
- OSのアップデート直後に発生した場合は、社内の情報システム部門や提供元の障害情報を確認する
- 接続方式(プロトコル)がサポート終了になっていないかを確認する
特に古い接続方式であるPPTPは、セキュリティ上の理由から多くの環境で利用が非推奨となっています。OSやVPNサーバー、提供サービスによっては今後利用できなくなる可能性もあるため、サーバー側が対応していればSSTPやIKEv2など、より新しい方式への移行を検討してください。
ネットワーク機器側に原因がある場合の対処法
端末側に問題がなければ、ルーターなどのネットワーク機器側を確認します。社内や自宅のルーターの設定が原因で、VPNの通信が途中で遮断されているケースです。
ルーターのVPNパススルー設定を確認する
VPNで使われるIPsecやPPTPなどの通信は、ルーターの初期設定では通過できないことがあります。多くの家庭用・業務用ルーターには「VPNパススルー」と呼ばれる、VPN通信をルーター越しに通過させるための設定項目があります。テレワーク用に新しいルーターへ買い替えた直後や、ルーターの設定を初期化した後にVPNが繋がらなくなった場合は、この設定を確認しましょう。
また、ルーターのパケットフィルタ機能で、VPNが使用するポートやプロトコルのパケットが遮断されている場合もあります。IPsecやPPTPなど、利用しているVPN方式に必要なパケットがフィルタを通過できるよう設定されているかを確認してください。
認証プロトコルの設定を機器間で一致させる
拠点間VPNのように複数の機器でVPNを構成している場合、ルーター側と端末側、あるいは拠点同士の認証プロトコル設定が一致していないと接続できません。たとえば片方がIPsec、もう片方が別の方式を指定しているといった不一致は、設定変更や機器入れ替えの際に起こりがちです。
複数拠点にVPNルーターを設置している環境では設定ミスが発生しやすいため、機器を更新した際は全拠点の設定を突き合わせて確認することが大切です。あわせて、ダイナミックDNS(固定のグローバルIPアドレスを持たない環境でホスト名からアクセスできるようにする仕組み)を利用している場合は、DDNSが正常に稼働しているか、登録したホスト名が正しいかも確認しましょう。
Windows環境でL2TP/IPsecが通らない場合の確認点
Windows環境でL2TP/IPsecを利用する場合に特有の注意点があります。VPNサーバー側がNAT(複数の端末が1つのグローバルIPアドレスを共有する仕組み)の配下にある、またはクライアントとサーバーの双方がNAT配下にある構成では、NATトラバーサル関連の設定が問題になることがあります。設定自体は正しく見えても接続できない場合は、ルーター構成やWindows側のIPsec NAT-T設定について、VPN提供元やMicrosoftの公式情報を確認してください。
また、「リモートコンピューターとのネゴシエート時にセキュリティ層でエラーが検出された」といった内容のエラーが表示される場合は、事前共有キーの誤りが原因であるケースも報告されています。エラーメッセージの内容を手がかりに、設定とあわせて確認することが解決への近道です。
拠点間VPN・IoT機器でVPNが繋がらない場合の注意点
ここまでは主にPCからのリモートアクセスVPNを想定した切り分けでしたが、拠点間VPNやIoT機器の通信でVPNを使っている場合は、トラブル対応の難易度が一段上がります。
無人拠点・遠隔機器ならではの切り分けの難しさ
監視カメラやセンサー、産業機器などのIoT機器は、無人の拠点や屋外に設置されていることが多く、VPNが切れても現地ですぐに状況を確認できません。PCのように画面やエラーメッセージがないため、「機器の故障なのか、回線の問題なのか、VPN設定の問題なのか」の切り分けに時間がかかります。
こうした環境では、次のような備えが重要になります。
- 通信モジュールやルーターの死活監視を導入し、切断をすぐ検知できるようにする
- 遠隔から機器やルーターを再起動できる手段を用意しておく
- 障害時の切り分け手順をあらかじめ文書化し、現地作業を最小化する
業務影響を最小化するための運用ポイント
拠点間VPNやIoT向けVPNが止まると、店舗のPOS連携、工場設備の稼働データ収集、遠隔監視映像の伝送など、業務そのものが停止するおそれがあります。復旧を急ぐだけでなく、業務影響を最小化する設計をあらかじめ組み込んでおくことが大切です。
- 主回線とは別にモバイル回線などのバックアップ回線を用意する
- 重要拠点には冗長構成(機器や回線を二重化する構成)を検討する
- 障害連絡フローと復旧優先順位を決めておく
なお、IPv6を優先する回線環境でIPv4側の通信に問題が起きると、VPNを含む一部のサービスだけが繋がらなくなることもあります。症状の切り分けについては、こちらの記事も参考にしてください。
IPv4が繋がらないのにIPv6は繋がる原因と対処法|トラブル解決ガイド
VPNトラブルが頻発する場合の根本対策
対処をしても繋がらないトラブルが繰り返される場合は、個別の設定対応ではなく、ネットワーク構成そのものを見直す段階かもしれません。
インターネットVPNと閉域網の違い
一般的に使われているインターネットVPNは、その名のとおり公衆のインターネット回線上に暗号化されたトンネルを作る方式です。低コストで導入しやすい一方、インターネットの混雑や障害の影響を直接受けるため、通信品質を完全にはコントロールできません。また、接続口がインターネットに露出するため、設定不備や脆弱性を突かれるリスクへの対策も継続的に必要です。
これに対して閉域網は、通信事業者が用意した限定されたネットワークを利用する方式です。IP-VPNや広域イーサネットなどがこれにあたり、インターネットから直接到達しにくい構成にできるため、不特定多数からのアクセスリスクを抑えやすく、通信品質も安定しやすいのが特長です。ただし、認証設定や端末管理などのセキュリティ対策は別途必要です。また、インターネットVPNに比べて導入コストや構築の手間は大きくなる傾向があります。セキュリティ・通信品質・コストのバランスを踏まえ、自社の用途に合った方式を選ぶことが重要です。
モバイル閉域SIMという選択肢
近年は、モバイル回線を使って閉域網に接続する「モバイル閉域接続(閉域SIM)」という選択肢も広がっています。専用のSIMカードを挿した機器が、通信事業者の閉域ネットワークを経由して社内ネットワークやクラウドに接続する仕組みです。
モバイル閉域接続には次のようなメリットがあります。
- サービス構成によっては、専用APNや閉域接続を利用することで、インターネット上にVPN接続口を公開せずに社内ネットワークやクラウドへ接続できる。VPNサーバーの公開設定やポート開放に起因するトラブル・攻撃リスクを抑えやすくなる
- 回線敷設工事が不要で、拠点の追加や移転にも柔軟に対応できる
- 監視カメラやセンサーなど、現地に担当者がいないIoT機器の通信手段として運用しやすい
VPNの接続トラブルのたびに現地対応や設定見直しに追われているのであれば、IoT機器や拠点の通信をモバイル回線ベースの構成に切り替えることは、運用負荷の軽減につながる有効な選択肢です。IoT機器の通信環境や閉域網の考え方については、次の記事で詳しく解説しています。
IoT機器とは?仕組み・メリット、安全な通信環境(SIM・閉域網)まで徹底解説
IoT/M2M向けのSIMはサービスごとに料金体系や対応キャリア、閉域・固定IPなどのオプションが大きく異なります。主要サービスの比較は次の記事を参考にしてください。
【IoT/M2M向けSIM】用途・企業規模別に徹底比較13選!
DXHUBの「IoTBiz SIM」は、IoT/M2M用途向けに多彩なプランを提供している法人向けSIMサービスです。監視カメラ向けの上り大容量プランなど用途別のプランが用意されており、1回線から導入できます。VPNトラブルを機に通信構成の見直しを検討される場合は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
VPNが繋がらないときは、闇雲に設定を変更するのではなく、原因の所在を順番に切り分けることが解決への最短ルートです。
- まずインターネット接続・認証情報・サーバー側障害の3点を確認する
- 端末側はセキュリティソフトの影響、VPNソフトの不具合、バージョンの古さを疑う
- ネットワーク機器側はVPNパススルー、パケットフィルタ、認証プロトコルの一致を確認する
- IoT機器や無人拠点では、死活監視や遠隔再起動などの備えが切り分けを助ける
- トラブルが頻発するなら、閉域網やモバイル閉域接続など構成自体の見直しも検討する
日々の業務やIoT機器の稼働を支える通信だからこそ、トラブル時の対応手順と再発防止の両面から、自社に合ったネットワーク環境を整えていきましょう。