ドローン物流とは
ドローン物流とは、無人航空機(ドローン)を輸送手段として活用し、荷物を発送元から届け先まで運ぶ仕組みのことです。ドローン配送と呼ばれることもあります。トラックやバイクによる陸上輸送では時間やコストがかかる区間を、空路で直線的に結べる点が最大の特徴です。
日本では2022年12月の改正航空法施行によって、有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が解禁されました。これを機に、実証実験の段階にとどまっていたドローン物流は、料金を徴収する商用サービスへと段階的に移りつつあります。ただし制度・技術・採算性のいずれにも制約が残っており、あらゆる荷物がドローンで運ばれる状況にはまだ至っていません。本記事では、2026年8月時点で確認できる情報をもとに、ドローン物流の現在地を整理します。
2つの基本モデル:ラストワンマイル配送と拠点間輸送
ドローン物流は、大きく2つのモデルに分けて考えると整理しやすくなります。
・ラストワンマイル配送:配送拠点や店舗から、個人宅・診療所・介護施設などの最終届け先まで運ぶモデルです。日用品、食料品、処方薬などが対象になります
・拠点間輸送:物流センターと中継拠点、本土と離島、工場と作業現場といった、事業者側の拠点同士を結ぶモデルです。定期便として運用しやすく、荷量の予測が立てやすい点が利点です
現在の国内案件では、過疎地域や離島でのラストワンマイル配送と、離島・山間部への拠点間輸送が中心です。都市部の一般消費者向け宅配は、飛行環境と社会受容性の両面から、その先の段階に位置づけられています。
ドローン配送が荷物を届けるまでの流れ
一般的なドローン配送は、次のような流れで運用されます。
・注文の受付:専用アプリ、電話、既存の受発注システムなどで依頼を受け付けます
・荷物の準備:発着拠点(ドローンポート)近くのデポで、商品の梱包と重量確認を行います
・搭載と離陸前点検:積載重量、バッテリー残量、気象条件、通信状態を確認します
・自動航行:あらかじめ設定した経路に沿って、衛星測位とセンサーを使って自動で飛行します
・荷降ろし:着陸して受け渡す方式のほか、ホバリングしたままウインチで降ろす方式、パラシュートで投下する方式があります
・帰還と充電:発着拠点へ自動帰還し、次便に向けて充電と点検を行います
運航中は、地上の運航管理者が機体の位置・高度・電池残量をモニタリングし、必要に応じて経路の変更や飛行中止を判断します。
物流で使われるドローンの機体タイプ
機体は形状によって特性が異なるため、用途に応じて選定します。
・マルチコプター型:複数のローターで垂直に離着陸します。狭い場所でも発着でき、ホバリングによる荷降ろしに向く一方、航続距離は比較的短めです
・固定翼型:飛行機と同じ翼で揚力を得ます。長距離・高速の輸送に向きますが、離着陸に相応の設備や場所が必要です
・VTOL型:垂直離着陸と固定翼飛行を組み合わせた方式です。両者の利点を狙えますが、機構は複雑になります
積載量は用途によって幅がありますが、国内の物流用途では数kgから20kg程度の機体が中心で、大型機ではさらに重い荷物に対応するものもあります。導入を検討する際は、実際に運びたい荷物の重量・容積・温度管理の要否から逆算して機体を選ぶことが重要です。業界ごとのドローン活用の広がりについては、以下の記事も参考になります。
ドローン物流が注目される背景
物流2024年問題とドライバー不足
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用され、1人あたりが運べる距離と時間が実質的に縮小しました。いわゆる「物流2024年問題」です。もともと運送業界では高齢化と人手不足が続いており、需要に対して輸送力が不足する構造は今後も解消しにくいと見られています。
そのなかで、配送1件あたりの人手を減らせるドローン物流は、輸送力を補う選択肢の一つとして位置づけられています。特に、届け先が点在していて1件あたりの荷量が少ない地域では、トラックの積載率が低くなりがちで、ドローンとの相性が比較的良いとされています。
過疎地・離島のラストワンマイル維持
国土交通省も、過疎地域等における輸配送の効率化と物流網の維持を目的として、ドローン活用の検討会やガイドライン整備を進めてきました。山間部や離島では、1軒の配達のために片道数十分かけて車を走らせるケースがあり、直線距離で結べる空路の効果が出やすい環境です。
買い物や通院が困難な住民の生活を支えるという、公共サービスに近い側面もあります。このため、自治体が事業主体または費用負担者として関わる案件が多いことも、この分野の特徴です。
災害時の物資輸送手段としての期待
道路が寸断されて孤立した地域へ、医薬品や食料を届ける手段としても期待されています。陸路の復旧を待たずに輸送できるため、初動対応の時間短縮につながります。平時のサービス運用を通じて機体・人員・発着拠点を維持しておくことが、そのまま災害時の備えになるという考え方です。
国内ドローンビジネス市場の規模と成長見通し
インプレス総合研究所の調査によると、2025年度の国内ドローンビジネス市場規模は4,973億円で、前年度の4,371億円から13.8%増加しました。2026年度は5,501億円(前年度比10.6%増)に拡大する見込みで、2025年度から2030年度は平均13.9%で成長し、2030年度には9,544億円に達すると予測されています。
ただし、この数字は点検・測量・農業・ドローンショーなどを含むドローンビジネス全体の規模です。物流用途はそのなかの一部であり、点検・測量分野に比べると実装のスピードは緩やかです。市場全体の伸びを、そのまま物流分野の伸びと読み替えないよう注意が必要です。
制度の現在地:飛行レベルと法規制
飛行レベル1〜4の違い
日本のドローンの飛行形態は、リスクの程度に応じてレベル1からレベル4に分類されています。レベル1・2でも目視内での構内搬送や短距離の運搬は可能ですが、広域・長距離の物流で中心となるのはレベル3以上です。操縦者から見えない範囲まで飛ばせなければ、離れた拠点を結ぶ輸送手段としては成立しないためです。
| 飛行レベル | 内容 | 物流での位置づけ |
| レベル1 | 目視内での手動操縦 | 目視内の小規模な運搬など |
| レベル2 | 目視内での自動・自律飛行 | 構内搬送など限定的な用途 |
| レベル3 | 無人地帯での目視外飛行 | 離島・山間部の配送で広く使われる |
| レベル3.5 | レベル3の立入管理措置を一部緩和 | 2023年12月新設。事業化しやすい区分 |
| レベル4 | 有人地帯での補助者なし目視外飛行 | 有人地帯の第三者上空を含む直接配送に必要 |
なお、航空法上の手続きはカテゴリーⅠからⅢの区分で定められており、上記の飛行レベルと厳密に一対一で対応するわけではありません。申請の際は、飛行レベルではなくカテゴリー区分で要件を確認してください。
レベル4飛行に必要な主な要件
レベル4飛行の解禁は大きな前進でしたが、解禁がそのまま自由な運用を意味するわけではありません。実施には主に次の要件を満たす必要があります。
・一等無人航空機操縦士の技能証明(国家資格)
・第一種機体認証を受けた機体
・国土交通大臣の許可・承認
・飛行形態に応じたリスク評価と、それに基づく飛行マニュアルの作成
・適切な運航管理の方法について国土交通大臣の審査を受けること
・アルコールや薬物の影響下で飛行させない、飛行前確認を行うといった、飛行場所を問わず適用される運航ルールの遵守
一等資格は二等に比べて講習時間・費用ともに負担が大きく、第一種機体認証についても、落下時の被害軽減や故障時の安全動作といった要求水準が高く設定されています。いずれも厳格な審査を経る必要があるため、レベル4飛行の運航体制を整えるには相応の準備期間と費用を見込んでおく必要があります。資格制度の詳細は以下の記事で解説しています。
ドローン(無人航空機)の国家資格の取り方や費用、免許制度についてわかりやすく簡単に解説
2023年12月に新設されたレベル3.5飛行
レベル4の要件が重いことから、事業化を後押しする目的で2023年12月に新設されたのがレベル3.5飛行です。名称から「レベル3と4の中間」と受け取られがちですが、実態はレベル3の要件を緩和した区分にあたります。
次の3つの条件を満たすことで、レベル3で求められていた補助者の配置や看板の設置などを、機上カメラによる確認で代替できるようになります。立入管理措置そのものが不要になるわけではなく、措置の方法をデジタル技術で置き換えられるという位置づけです。
・無人航空機操縦者技能証明(二等以上)のうち、飛行させる機体の種類・重量に対応し、目視内飛行の限定解除を受けたものを保有していること
・第三者賠償責任保険に加入していること
・機上カメラで飛行経路上に第三者がいないことを確認すること
これにより、道路や鉄道を横断する経路でも、一定の要件下で補助者を張り付けずに運航できるようになり、運航コストが下がりました。実際、国内ではレベル4よりもレベル3.5を軸に事業化を進める事例が目立ちます。
日本初の「レベル3.5」ドローン配送、和歌山市でDID地区を含むルートで実施—NEXT DELIVERYが実証へ
国土交通省のガイドラインVer.4.0
国土交通省は、ドローン物流に着手する事業者向けの手引きとして「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン」を公表しています。2021年3月のVer.1.0(法令編)から改定が重ねられ、2023年3月31日に公表されたVer.4.0が、レベル4飛行を対象に含めた最新版です(2026年8月時点)。
ガイドラインには、ユースケースに応じた機材の選定、離着陸場所と飛行ルートの設定、利用者インターフェース、荷物の管理、保険への加入、そして収支改善方策までが整理されています。特に、提供するサービスが持続可能な事業形態かどうかを十分に確認するよう促している点は、検討の初期段階で目を通しておく価値があります。
機体登録・操縦者資格などの基本ルール
飛行レベルにかかわらず共通して守るべきルールもあります。機体重量100g以上のドローンは国土交通省への機体登録が義務づけられており、未登録での飛行は航空法違反となります。また、空港周辺、地表または水面から150m以上の高さ、人口集中地区(DID)の上空などは飛行が制限される空域にあたり、飛行させるには原則として許可が必要です。
このDID規制については、2026年7月1日から適用された国土交通省告示第435号により、都市計画法上の工業専用地域内の区域が対象から除外されました。臨海部の物流拠点やプラント周辺での運用に関わる変更です。ただし対象は「工業専用地域」に限られ、工業地域や準工業地域は含まれません。目視外飛行や夜間飛行といった飛行方法についての承認も、従来どおり必要です。飛行可能な場所の調べ方は以下の記事で整理しています。
ドローンを飛ばせる場所はどこ?探し方や許可不要地域、簡単に探せるアプリ、飛行禁止空域を紹介
ドローン物流を支える通信インフラ
なぜ機体制御にモバイル回線が使われるのか
目視外飛行では、操縦者と機体の間に安定した通信経路が欠かせません。飛行指示の送信、機体の位置・姿勢・バッテリー情報の受信、機上カメラ映像の伝送を、飛行中ずっと途切れさせずに行う必要があるためです。
ドローン用の専用無線は到達距離が限られ、地形の影響も受けやすいため、長距離の目視外飛行では携帯電話網(LTE)を利用する構成が一般的になっています。国内の物流専用機にも、LTE通信による目視外飛行に対応した機体があります。既存の商用ネットワークを使えるため、経路上に自前の通信設備を建てなくてよい点が、実務上の大きな利点です。
携帯電話の上空利用ルールと150m以上への緩和
ただし、携帯電話網は地上での利用を前提に基地局が設計されています。上空で端末を使うと見通しが良いために複数の基地局へ電波が届き、地上の通信に干渉するおそれがあります。このため、ドローンに携帯電話端末を搭載して飛ばす場合、通常のスマートフォン向け契約をそのまま使うことはできず、所定の手続きが必要になります。
制度は段階的に緩和されてきました。当初は実用化試験局として個別に免許を取得する必要がありましたが、その後、高度150m未満については簡素化された手続きが整備され、さらに2023年4月からは高度150m以上の空域でも簡素化した手続きでモバイル通信を利用できるようになりました。これを受けてNTTコミュニケーションズは、2024年5月15日から「LTE上空利用プラン」の利用範囲・適用対象を、航空機や高度150m以上へ拡大しています。
自社でドローンを運航する場合は、機体に搭載する回線が上空利用に対応した契約になっているかを、必ず事前に確認してください。
総務省 電波利用ポータル「ドローン等に用いられる無線設備について」
運航管理システム(UTM)の役割
複数の機体が同じ空域を飛ぶようになると、機体同士や有人航空機との接近を避ける仕組みが必要になります。その役割を担うのが運航管理システム(UTM:UAS Traffic Management)です。飛行計画の登録、機体位置のリアルタイム共有、空域の混雑状況や気象情報の提供といった機能を持ちます。
1事業者が1機を飛ばす段階では大きな問題になりませんが、複数の事業者が同一地域で運航する段階に入ると、UTMへの対応が実質的な事業要件になっていくと考えられます。
通信回線を選ぶときの確認ポイント
ドローン物流の運用では、機体制御そのものだけでなく、発着拠点の監視カメラ、荷物や設備のセンサー、受付端末など、周辺機器にも通信が必要になります。回線を検討する際は、次の点を確認しておくと構成を組みやすくなります。
・機体に載せる回線が、上空利用に対応した契約・手続きになっているか
・運用予定エリアで、利用するキャリアの電波が安定して届くか
・カメラ映像を伝送する場合、上り方向の通信量に耐えられるプランか
・1回線単位で追加・解約でき、実証段階の小規模な構成から始められるか
・複数拠点へ展開する際に、回線の管理や請求を一元化できるか
用途や企業規模に応じたIoT向けSIMの選び方は、以下の記事で比較しています。
【IoT/M2M向けSIM】用途・企業規模別に徹底比較13選!
ドローン物流のメリット
配送リードタイムの短縮
空路は道路の形状や渋滞の影響を受けず、直線に近い経路で移動できます。後述する長崎県五島市の事例では、陸路で約60分かかる距離を約25分で飛行しています。峠越えや大きな迂回が必要な地形ほど、短縮の効果は大きくなります。
省人化とドライバー負荷の軽減
1便あたりに必要な人員を減らせる点も利点です。特にレベル3.5飛行では、一定の要件下で補助者の配置や看板の設置を機上カメラによる確認に代替できるため、運航に張り付く人数を抑えられるようになりました。長距離の単独運転や悪路の走行といった、ドライバーへの身体的な負荷を減らす効果も期待できます。
陸路が使えない地域への到達
橋のかかっていない離島、冬季に道路が閉鎖される山間部、災害で道路が寸断された地域など、陸上輸送では到達が難しい場所にも荷物を届けられます。従来は「運べないので運ばない」とされていた需要をサービスの対象に含められる点は、他の手段では代替しにくい価値です。
CO2排出の削減
電動ドローンは飛行中に二酸化炭素を排出しません。積載率の低いトラック便をドローンに置き換えられる区間では、輸送1件あたりのCO2排出量を減らせる可能性があります。国土交通省も、CO2排出量の削減効果と費用対効果を検証する調査事業を実施してきました。ただし削減効果は、置き換える前の便の積載率や走行距離、使用する電力の由来によって変わるため、案件ごとの試算が必要です。
ドローン物流の課題とデメリット
積載重量と航続距離の制約
現行の機体では、一般的な宅配便の荷物をすべて運べるわけではありません。重量と容積に上限があり、大型の家具や大量の荷物は引き続きトラックの領域です。また、バッテリー容量が航続距離を規定するため、往復できる範囲に発着拠点を置く設計が前提になります。運びたい荷物の実態と機体スペックが合わなければ、そもそも検討の土台に乗りません。
天候による欠航リスク
強風、降雨、降雪、着氷はいずれも運航に影響します。機体ごとに耐風性能や防水性能の基準が定められており、これを超える気象条件では飛行を見合わせることになります。物流サービスとしては「毎日必ず飛ぶとは限らない」点をどう扱うかが課題で、陸送との併用や、翌日への振替を前提とした運用設計が現実的です。
採算性の確保が最大の壁
技術的に飛ばせることと、事業として続けられることは別の問題です。機体の購入と保守、バッテリーの交換、発着拠点の整備、運航要員の人件費、保険料、資格取得費用などが継続的に発生します。一方で1便あたりに運べる荷量は限られるため、配送料だけで費用を回収するのは容易ではありません。
このため多くの案件では、自治体の負担や補助事業と組み合わせるか、複数の物流事業者の荷物をまとめて運ぶ共同配送によって1便あたりの積載率を高める工夫が取られています。国土交通省のガイドラインが収支改善方策の検討を促しているのも、この構造があるためです。
安全性と社会受容性
有人地帯の上空を飛ばす以上、落下事故のリスクをゼロにすることはできません。第三者賠償責任保険への加入に加えて、飛行経路の慎重な設定、住民への事前周知、騒音やプライバシーへの配慮が求められます。地域の理解を得られるかどうかは、技術要件と同じくらい実装の成否を左右します。
資格保有者・運航人材の不足
一等・二等の技能証明を持つ人材や、運航管理を担える人材はまだ十分とは言えません。自社で運航体制を組む場合は、資格取得にかかる期間と費用、そして継続的な訓練を計画に織り込む必要があります。
ドローン物流の導入事例
セイノーHD×エアロネクスト「SkyHub」
セイノーホールディングスとエアロネクストが共同で展開する「SkyHub」は、既存の陸上輸送とドローン物流を接続し、地域物流全体の最適化を目指す仕組みです。ドローンデポと呼ばれる拠点を軸に、異なる物流会社の荷物を一括して運ぶ共同配送、買い物代行、フードデリバリー、医薬品配送などを、地域の課題やニーズに合わせて組み合わせます。2021年の始動以降、国内の複数地域で社会実装が進んでいます。
また両社と子会社のNEXT DELIVERYは、2023年12月に北海道上士幌町で、日本初となるレベル3.5飛行によるドローン配送の事業化を発表しました。制度改正を素早く事業へ取り込んだ例と言えます。
セイノーホールディングス「日本初、「レベル3.5」飛行によるドローン配送の事業化」
日本郵便のレベル4飛行による配送
日本郵便は、2018年11月に福島県で日本初となるレベル3飛行による郵便物配送を実施しました。その後、2023年3月24日には東京都奥多摩町で、第三者上空を含む経路でのレベル4飛行による荷物配送を試行しています。改正航空法の施行後、比較的早い時期にレベル4を実運用の文脈で試した取り組みです。
長崎県五島市の処方薬配送(そらいいな)
豊田通商の子会社であるそらいいなは、2022年5月から長崎県五島市で、固定翼型ドローンによる医療用医薬品などの配送をレベル3飛行で行ってきました。この方式では港などの無人地帯にパラシュートで荷物を投下するため、受取人が指定場所まで取りに行く必要があるという課題がありました。
2025年2月10日には五島市玉之浦地区でレベル4飛行による処方薬配送の実証を実施し、2025年11月からは同地区の特別養護老人ホーム向けに、患者から配送料を徴収する形での処方薬配送を開始。2026年2月3日に商用化を発表しています。陸路で約60分かかる距離を約25分で飛行し、施設スタッフの移動時間を往復約2時間から約20分へ短縮したとされています。実証から有償サービスへ移行した、国内の代表的な事例です。
豊田通商「九州初、ドローンのレベル4飛行による処方薬の配送実証を実施」
そらいいな「長崎県五島市・福江島で「処方薬」のドローン配送商用化を実現」(2026年2月3日)
KDDIスマートドローンの自治体連携
KDDIスマートドローンは、長野県伊那市で2020年8月に、自治体が運用するドローン配送事業としては日本初となる本格運用を開始しました。このほか、兵庫県養父市での食料品・日用品の配送実証や、静岡県熱海市初島の宿泊施設への物資運搬実証など、地域課題に合わせた取り組みを各地で行っています。通信事業者としてのネットワーク基盤を運航管理に活かしている点が特徴です。
導入を検討する企業が押さえる進め方
課題の整理とユースケースの設定
最初に決めるべきは「何を、どこからどこへ、どのくらいの頻度で運ぶか」です。ドローンありきで始めると、既存のトラック便より高くつくという結論になりがちです。陸送の所要時間が長い区間、積載率が低い便、人手の確保が難しい経路など、現状の運用で明確にコストや制約が生じている部分を洗い出すところから始めます。
自社運航か外部委託かの見極め
運航を自社で行うか、運航事業者へ委託するかは早い段階で方針を決めます。自社運航は長期的にコストを抑えられる可能性がある一方、資格取得、機体の維持管理、許可申請、保険手配までを自前で担う必要があります。年間の運航便数が限られる場合や、まず効果を検証したい段階では、外部委託から始めるほうが総費用を抑えやすいでしょう。
スモールスタートと収支設計
1地域・1経路・限られた品目から始め、運航実績と実費を把握してから範囲を広げる進め方が定着しています。国土交通省のガイドラインも、収支改善方策を含めて持続可能な事業形態かどうかを確認するよう求めています。試算にあたっては、機体費用だけでなく、バッテリーなどの消耗品費、発着拠点の用地・整備費、通信費、保険料、要員の人件費と訓練費まで含めることが重要です。
補助金・実証事業の活用
国や自治体の補助金、実証事業の公募を活用できる場合があります。制度は年度ごとに内容と募集時期が変わるため、検討している時点での最新の公募情報を必ず確認してください。過去に実施されたドローン関連の補助金の傾向は、以下の記事が参考になります。
【2024年】ドローン導入に使える補助金や助成金5選!応募期間・条件を紹介
ドローン物流の今後の展望
採算性を左右する制度整備は、2026年に大きく進みました。国土交通省は2026年4月21日に「エリア単位でのカテゴリーⅢ飛行(レベル4飛行)における留意事項、事例集等(第2版)」を公表し、飛行経路を1本ずつ特定して申請する方式に加えて、エリア単位で許可を取得する道筋を示しています。配送先が増えるたびに経路を申請し直す負担が、軽減されていく方向です。
また2026年6月2日に公表された「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン(第二版)」では、第一版で操縦者1人あたり最大5機とされていた同時運航機体数の上限が撤廃されました。ガイドラインは、段階的な検証などを前提としています。1人が扱える機体数が増えれば1便あたりの人件費は下がるため、採算性の改善に直結する変更です。
当面の焦点は、これらの制度を実際の物流運用へ定着させることです。具体的には、エリア単位申請や多数機同時運航を前提とした運航体制の構築、第一種機体認証を取得した機体の拡充、そして安全性を裏づける運航実績の蓄積が課題になります。
一方で、都市部の一般消費者向け宅配が近い将来に一般化するかどうかについては、慎重な見方が多いのが実情です。当面は、過疎地・離島・山間部でのラストワンマイル配送、医療分野を中心とした緊急性の高い輸送、そして災害対応が実装の主戦場になると見られます。物流事業者にとっては、既存の陸上輸送を全面的に置き換えるものではなく、陸送では採算が合わない区間を補完する手段として位置づけるのが現実的です。
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ドローン物流の運用では、機体そのものだけでなく、発着拠点の監視カメラ、各種センサー、受付端末など、複数の機器に通信環境が必要になります。こうした地上側のIoT機器向け回線をお探しなら、株式会社CoeNovaが提供するIoTBiz SIMをご検討ください。
■ 主な特徴
・4キャリア対応(ドコモ・ソフトバンク・KDDI・楽天)
・1回線から契約可能・最短翌日発送
・初回取引から売掛け対応(Paid決済)
・テストSIM貸し出し可能
■ 代表的な料金(税別)
・ドコモ回線 通常プラン:1GB 450円/月 〜 50GB 6,500円/月
・上り特化大容量プラン:上り100GB 2,980円/月 〜(監視カメラ等に最適)
固定IPオプションの取り扱いもありますが、在庫が変動するためお問い合わせください。なお、ドローン機体に搭載して上空で利用する場合は、上空利用に対応した契約や手続きが別途必要になります。
まとめ
ドローン物流は、2022年12月のレベル4解禁と2023年12月のレベル3.5新設によって、実証実験から商用サービスへと段階的に移行しつつあります。長崎県五島市のように、配送料を徴収する形でサービスが立ち上がった例も出てきました。
一方で、積載重量と航続距離の制約、天候による欠航、そして採算性の確保という課題は残っています。導入を検討する際は、次の順序で整理すると判断しやすくなります。
・陸送でコストや制約が生じている区間を特定し、運ぶ荷物の重量・頻度を具体化する
・必要な飛行レベル(レベル3・3.5・4)を見極め、資格・機体認証・許可の要件を確認する
・機体の通信、地上設備の通信を含めた通信構成を設計する
・自社運航か外部委託かを決め、消耗品費や人件費まで含めた収支を試算する
・1経路のスモールスタートで実績を積み、補助金の活用も検討しながら段階的に広げる
技術と制度は年単位で動いている分野で、2026年にもエリア単位申請や多数機同時運航に関する制度更新がありました。検討にあたっては、国土交通省や総務省の最新の公表情報を確認しながら進めることをおすすめします。